食の世界で働く選択肢を広げる、体験型ライフスタイルイベント栄養士・管理栄養士のリアルに触れる「食べる・暮らす・はたらく」展 イベントレポート

2022年8月7日開催された、栄養士、管理栄養士が送る「食べる・暮らす・はたらく」展。
主催は栄養学生/栄養士/管理栄養士のオンラインスクール「Harmo」さんです。

イベントでは、「〜食と私の気になるカンケイ〜今の仕事をするきっかけ、食を通して伝えたいこと」をテーマにしたトークセッションが開催されました。

今回は、その様子をお届けします。

最初に登壇したのは、村田奈央さんと河原あいさんです。

村田 奈央さん

スイーツクリエイター / Sakusaclier(サクサクリエ)/ お菓子の製造販売 / お菓子教室 / レシピ制作

河原 あいさん

管理栄養士 博士(環境共生学)/ 大学院進学支援 / インナーヘルスケア / webライティング / マーケティング

村田さんが管理栄養士として、動物性フリーのヴィーガンスイーツを作るようになったきっかけは、高校時代にまで遡ります。

「高校生の時、母親が乳がんが患い、治療の一環で家族全員の食事を玄米菜食に変えたんです。
その際、お菓子作りも植物性の食材に置き換えて作るようになり、卵を使わなくてもお菓子が作れるんだと、興味を持ち始めました。
また、管理栄養士という仕事も初めて知りました」

その後、大学で管理栄養士の資格を取得。卒業後は製菓専門学校に1年間通い、カフェに就職。
業務の傍ら、個人でお菓子教室や1dayカフェの開催など実績を積み、2018年に独立をしました。

「管理栄養士になると、説得力が増すんです。学んだ知識を大好きなお菓子作りに生かして、仕事にできているのはありがたいです」

現在は「Sakusaclier-サクサクリエ」という屋号で、創作焼き菓子・ヴィーガンスイーツの販売や、お菓子教室、レシピ開発等を行っています。

管理栄養士養成大学の環境共生学博士学生でもある河原さんは、webライターなどの活動を通して、ヴィーガンに関する発信も行っています。

「私は大学進学を機に環境問題と栄養学について学びました。大学4年生時からは乳酸菌の研究をはじめ、さらに腸内環境も学んでいます。
色々と学ぶ中で、お肉は食べないほうがいいんじゃないか?でも、栄養学的にどうなんだろう?と思うようになったんですね。
そこで、お肉を食べない生活を始めてみました。感想は、”意外といけるな”と。
また、ヴィーガンになることは環境問題に取り組むことにもなるのではと考え、2020年8月に、1ヶ月間ヴィーガンチャレンジを実施してみたんです。20日目くらいから、このままヴィーガンで生きても大丈夫だなと確信しました」

また、ヴィーガンとして過ごすことで、新たな発見があったと言います。

「ヴィーガンになってから、アイデア力が上がったなと思います。例えば、一緒に食事をしている人がオムライスを食べていて、自分は納豆ご飯だったとしたら、やっぱり見た目的にも寂しい。だったら、摂れる食材でどう工夫するか?とアイデアを膨らませるようにします。
制限があると、クリエイティビティが磨かれるなと感じます」

続いての登壇者は、小笠原真智さん。

小笠原 真智さん

アスリート専門管理栄養士 / “食事が変わればあなたが変わる” / 陸上競技 / ラグビー

高校2年生の時にスポーツ栄養士を志すようになったという小笠原さん。当時、陸上をやっていたことと、食物科に在籍していたことで、「スポーツと食」は身近で、それを仕事にできたらいいなと思うようになったそうです。
スポーツ栄養に興味を持ったきっかけは、自身の陸上体験でした。

「中学生の時は、試合の日は何も食べちゃいけないと思ってたんです。けれど、高校生になり、栄養の勉強をし始めたら、食べたほうがいいのかな?と思うようになって。試合当日、食べてみたら予選、準決勝とに進むにつれてタイムが短くなったんです。それまでの私は、後半になるにつれ、力が発揮できない”決勝に弱い選手”でした。実はそれは単なるエネルギー不足だったということに気づいたんです」

大学進学後、体育会系の部活で50人ほどの部員の前で栄養学のレクチャーを定期的に行っていましたが、「合同合宿で、200人を前にして栄養セミナーやったら面白いのでは?」と考え、実施。
栄養学に興味のない人に、どう伝えるかを考え、本番に臨みました。

「合宿には5つの学校が参加していたので、各学校のマネージャーに、キャプテンの当日のお昼の写真をこっそり撮ってくださいとお願いしました。お昼はビュッフェ形式なので、どの食材をどれだけの量とるのかは人によって様々です。それを見ながら、わいわい話すことで、まず”食事って大事だな”という空気を作りました。その上で、栄養の話に入りました」

大学3年生の時には、知人から「社会人トレーナー向けに3時間のスポーツ栄養セミナーをしてほしい」というハードルの高いオファーが来ましたが、「トレーナーの視点でもわかりやすい内容にするためには?」と120%の準備をして当日を迎えました。結果は大好評で、その後5年にわたり依頼いただいたと言います。

「逆境に燃えるんですよね」と語る小笠原さんは、どんなにハードルが高くても、目の前のチャンスに勇気を出して挑戦し続け、確実に次につなげています。
個人事業主となった現在も、ラグビーのサポートをしたいという思いを胸に、勇気を出して知人のトレーナーにインターンを依頼。ラグビーチームのサポートという道にチャレンジしています。

 

最後に登壇した菱沼未央さんは、参加した学生からの質問に答える形式で、セッションを進めました。

菱沼 未央さん

フリーランス管理栄養士 / おいしいごはんは世界を救う!惣菜管理士 / 離乳食・幼児食コーディネーター / パンシェルジュ / 料理写真 / 器のプロデュース

ーフリーランスになって、まず何から始めましたか?
「SNSで発信するのはもちろん、個人名のHPを作って、自分は何ができるのか?が分かるようにしました。
一番初めは無名なので、待っていても仕事はきません。
そこで、母校の教授に仕事を振ってくれないかと申し出て、産官学共同のプロジェクトに呼んでもらえました。それをきっかけに、色々なところから依頼をいただけるようになりました。
独立したては、まず見つけてもらうのが難しいので、えいっ!と踏み出す前に、SNSやHPを作り、独立する旨を伝えて仕事振ってもらう、といった行動を取るのがいいと思います」

ーフリーランスになろうと思ったきっかけを教えてください。

「大学卒業後、食品企業に勤めたのですが、摂食障害とうつ病を発症して、休職することになりました。退職後、もう一度就職するのは無理だと、背水の陣でフリーランスになることを決意したんです。
もともと料理や栄養学が好きだったり大学時代から毎日食事を作って撮影してたりしていたので、その好きなことを仕事として全部やろうと思いました」

ーフリーランスになることに不安はありませんでしたか?

「不安がなかったわけではありませんが、自分で稼がなきゃ生きていけないという気持ちの方が強かったですね。
依頼してくれた人に全力で応えようと、目の前の仕事に取り組みました。
今、すごく仕事が楽しいです。好きを仕事にするのは良くないという論調もありますが、個人的には好きを仕事にすると、身体的な負担は大きくても精神的な負担は少ないので、いいなと思います。

今、何が好きで、何がしたくて、で悩んでいる方もいると思います。けれど、一回不安やプレッシャーを傍に置いて、今日するなら何をしたい?という背水の陣メソッドをやってみるといいんじゃないかなと思います」

ーフリーランスの活動をする上で、軸を作るのが大事だと思うのですが、軸を作る上で意識すべきことを教えてください。

「私の軸は、”一人でも多くの人が食を楽しむ。楽しんだ結果、ハッピーになる”です。これは自分が摂食障害を経験したことで作られた軸です。
どんな経験でも糧になるし、軸や信念になります。なので、軸を作るためにはまず自分の経験を振り返ってみるのがいいと思います」

そして最後に、進路に悩む学生に、「自分を大切にしていない人は人に手を差し伸べられません。どんな生き方をするにしても、自分を大事にしてほしい」とエールを送りました。

 

栄養学生/栄養士/管理栄養士のオンラインスクール「Harmo」

https://www.harmo.online/