ピルを飲むのって、なんとなく怖い。
- ピルって避妊の薬でしょ?
- 飲んでるの、知られたくない
- なんか高そうな気がする……
それもそのはず。
日本での低容量ピルの普及率は数%。
内服している人の方が圧倒的にマイノリティなんです。
そんな中、私は10年近くピルを服用し続けています。
なぜなら、看護師という職業柄、不規則なシフトのせいで生理不順に陥りやすく、PMSや子宮筋腫という病気も抱えているためです。
今回は看護師側の客観的な意見と患者側の主観も交えて、低用量ピルについて説明していきます。
そもそも低容量ピルとは、いったいなに?
低容量ピルは、エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが入った薬のこと。
妊娠したと身体に勘違いさせるはたらきがあります。
- そもそも、低容量ピルとは?
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女性ホルモンの働きを利用した薬で、初潮のあった女性は飲み始めることができます。ピルには避妊を目的とするOC(低用量経口避妊薬)と月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療を目的とするLEP(低用量エストロゲンープロゲスチン)の2種類があります。
そのため、避妊に効果があるのはもちろん、身体からすると生理を引き起こしている場合じゃない!というモードになります。
繰り返しになりますが、低用量ピルの中にはエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが入っています。
この2つは片方が上がると片方が下がるという、拮抗作用(きっこうさよう)があります。
- エストロゲンの作用
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- 子宮内膜(生理の時に排出されるもの)の増殖・肥厚
- 頸管粘液の分泌↑粘稠度↑牽糸性(伸びやすさ)↑=精子ウェルカムモード
- 膣粘膜の角化・肥厚
- プロゲステロンの作用
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- 子宮内膜の分泌期様変化(妊娠に備えて物質がでる)
- 頸管粘液の分泌↓粘稠度↓牽糸性↓=精子ノーサンキューモード
- 基礎体温の上昇
低用量ピルを飲むと、身体はどうなるの?
低用量ピルは毎日、同じ時間に1錠飲むのが鉄則。
避妊に効果があるのはもちろん、PMSや月経困難症、子宮内膜症の症状が軽減されると言われています。
普段の言葉に置き換えると生理が軽くなる、というイメージです。
詳しくみていきましょう。
排卵(卵子の製造)がとまる
低容量ピルを飲むと身体が妊娠モードだと勘違いし、これ以上の妊娠を防ごうと卵胞の発育と排卵を抑制します。
この排卵をとめるというのがミソ。
仮にSEXで精子がやってきても受精する相手が不在なので避妊効果が高い(99%以上)というわけです。
子宮内膜(生理の時に排出されるもの)が増えるのを防ぐ
さきほど、ピルの中にはエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンが入っていること、そして、この2つは拮抗作用があることをお伝えしました。
ピルを飲むと、2つのホルモンがお互いの作用を潰し合うんです。
例えば子宮内膜(生理の時に排出される血液やゼリー状の物体)を作るエストロゲンがプロゲステロンによって邪魔されることによって出来にくくなります。
その結果、着床しにくい状態になるのに加えて、生理の際の出血量(経血)が減ります。
頸管粘液の粘稠度(ネバネバ度)が上がる
身体はすでに(勘違い)妊娠モード。
これ以上の精子の侵入は防ぎたい。
プロゲステロンの作用によって
頸管粘液の粘稠度をあげて精子が通過しにくい状況を作ってくれます。
そのほか、低容量ピルの利点は以下になります。
- 低用量ピルの避妊以外の利点
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- 卵巣癌の発生率の低下
- 子宮体がんの発生の低下
- 子宮体がんの発生の低下
- 子宮内膜症の症状緩和
- 月経困難症、PMSの改善
- 良性乳房疾患の発生率の低下
低容量ピルをもらうには、どうすればいいの?
婦人科(産婦人科)を受診しましょう。
だいたいこんなことをします。
初診時にすること
・問診、血圧測定、体重測定
・ピル初診採血、子宮がん検査、子宮卵巣エコー
・乳腺エコー
※PMSや月経困難症の症状がある場合には、保険適応となる場合もあります。
具体的な料金が気になる方は、こちらの記事を参照してください。
子宮がん検査、子宮卵巣エコーは内診を通しての実施となります。
そして、飲み始めてからは定期的な受診も必要となります。
定期的な検査ですること
・子宮がん検査
・子宮卵巣エコー
・採血
・乳腺エコー
おおよそ、1年に1回の検査が多いですが、生理痛、子宮筋腫、卵巣嚢腫などがある人は、医師の判断で何回か行う場合もあります。
おわりに
ピルが避妊薬なのは間違いありません。
でも、低容量ピルは妊娠したら困る!と、慌てて内服するものではなく、女性が自身の女性性をケアするためのもの。
男性の皆様方には、ピルを飲んでる女性に対して、いわゆるビッチ!みたいな認識をして欲しくありません、絶対に。
こういう考えではなくて、女性の妊娠に備えるための身体や心の変化に配慮してくれるような環境やパートナーがいたら理想的ですよね。
それから、ネットや書籍をみるといろんな体験談や情報が載っています。
でも、その多くは私はこうだった!という一事例にすぎません。
言い換えれば、あなたにそのまま応用がきくかとどうか、誰にもわからないということです。
生理や妊娠に関して思うところがあったら、ぜひ婦人科を受診してください。
専門家は、その専門性が武器なのではなく
これまで出会ってきた患者さんのデータ量が武器です。
いろんな事例を、たくさん知っています。
同じ病気に同じ薬を投与してもその経過は人によってさまざま。
医師は、その経過に関して客観的なデータを膨大に持っていること、そして、あなたのためを思ってベターな選択肢を提示してくれることに価値があります。
もちろん、選ぶかどうかの最終決定者はあなたですが、
リスクを考えたらキリがありません。
自分に起こることは100か0のどちらかです。
悩んでいる時間や不安な気持ちを打破したいなら、まずは婦人科を受診してみてください。
悩むのは、行動してから。