流産も死産も、誰のせいでもないから赤ちゃんの2%が死んで生まれてくること、ご存知ですか?

どんなに医療技術や社会的サポートが充実しても、赤ちゃんの死亡率(周産期死亡率とも言います)を0にすることはできません。

あまり知られていませんが、赤ちゃん100人のうち2人は死んで生まれてきます。
1人は人工妊娠中絶で。もう1人は自然流産で。

というわけで、今回のテーマは死産。

実は、多くの死産経験をした女性が、このことを誰にも話せず生きています。
あなたには関係なくても、あなたの友人が当事者かもしれません。

もしものために、知っておいてもらえると嬉しいです。

 

「死産」って、どういうこと?

死産という言葉、聞き慣れないですよね。
死産というのは言葉の通り、死んで生まれてくるという意味です。

妊娠継続を望んでいても、赤ちゃんの心拍が止まってしまい、胎児が死んでしまうことがあります。
この場合、自然に流産することもあれば、強制的に体外へ胎児を排出させる処置(掻爬もしくは分娩)を行うことがあります。

いずれも死産の扱いです。

また、妊娠12週以降に人工妊娠中絶を行った場合、お母さんの身体の外では生きられず死んでしまうため、死産となります。
人工妊娠中絶についてはこちらの記事を読んでみてください。

 

赤ちゃんが死んだのは、誰のせい?

よく死産を経験したお母さんたちが

私のせいで赤ちゃんが死んじゃった…
といいます。

しかし、死産の原因はわからないことが多いです。

希望する人は、赤ちゃんが生まれてから解剖を行い、死産の原因を調べることもできますが

・先天的な異常があった
・感染症になってしまった

など、救いとなるような答えが待っているわけではありません。

お母さんが無理をして仕事をしたから、これを食べてしまったから、など色々聞かれますが、原因はほぼわかりません。

納得できない人も多いと思いますが、医療は万能ではありません。
まだまだ、わからないこと・解決できないことの方が多いのです。

赤ちゃんが亡くなってしまうのは、誰のせいでもありません。
どうか、自分を責めないでほしいです。

 

赤ちゃんがお腹の中で死んでしまったら、どうするの?

ここから、具体的な処置や経過についてお話していきます。

妊娠12週未満の場合は、子宮内容除去術という手術を行います。
手術の仕方は人工妊娠中絶と同じになります。

妊娠12週以降に赤ちゃんが亡くなってしまった場合は、人工的に陣痛を起こしお腹の中から体外へ出します。
要は、いわゆる出産と同じプロセスを辿ります。

ですが、赤ちゃんが産声をあげることはありません。
お母さんにとっては、身体的にも精神的にもつらい処置です。

この処置は、陣痛を起こすために入院して行いますので、長い人だと1週間ほど入院をします。

 

処置は、どんな流れになの?

お腹の中で赤ちゃんが亡くなっていると判断する際は、医者2名で確認を行います

はじめに、エコーで赤ちゃんの心臓が動いていないかを確認します。
場合によっては、1~2週間ほど時間をあけてから再度赤ちゃんの心臓の動きを確認します。

動いていないと判断した場合は、残念ながらお腹の中で亡くなっている状態となります。
その後、死んでしまった赤ちゃんを体外に出すため、入院して処置を行なっていきます。

 

死産処置の入院〜退院までの流れは、こんな感じ

入院してから

入院後、子宮を広げる処置を行います。

子宮の入り口に5cm程度の細い棒を入れます。
時間が経つと腟分泌物を吸い棒が大きくなります。
それで子宮の入り口を広げます。
(綿棒が水を吸って膨らむイメージです)

分娩までのプロセス

次に、風船を使って子宮の入り口(子宮口)を広げます。
この器具はネオメトロといい、先端が風船みたいに膨らむようになっています。

細い棒を入れるよりも、もっと大きく子宮口を広げられるため、人によってはこの時点で陣痛が来て赤ちゃんが生まれてくる人もいます。

もちろん、陣痛なので痛みが出ます。
残念ながら、子宮を収縮させるために必要な痛みのため、過剰な薬剤は出せません。

お母さんがつらい思いをするだけなのだから、無痛分娩や全身麻酔下で手術したほうがいいのでは?という意見も聞こえてきそうですが、無痛分娩、全身麻酔下での手術ともに、それぞれリスクもあるものです。

お母さんの身体を一番に考えると、普通に分娩したほうがその後の回復が早いと言われています。

 

なお、ネオメトロを使用しても陣痛が来ない場合は薬を使います。

この薬の作用は子宮収縮をさせるものです。
これは、病棟内でも鍵のかかる場所で管理をしているものです。
誰に、いつ、どれくらい薬を使ったか、数や量を厳密に数えています。

膣のなかにこの薬を入れ、30分〜3時間程度、医者の指示のもとで診察・観察をこまめにおこなっていきます。

分娩

死産ですが、赤ちゃんが生まれるときは分娩台に行きます。
生まれたら子宮の中に胎盤の残りなどの忘れ物がないか確認をし、終了となります。

処置後〜退院まで

お母さんの身体の状態に合わせてになりますが、分娩した翌日に退院となる場合が多いです。

出産後はホルモンの影響で母乳が出ますが、母乳分泌が苦痛に感じるときは母乳を抑える薬を出すことがあります。

 

赤ちゃんが生まれたあとは、どうするの?

お母さんの精神的苦痛を考えると心苦しいですが、死産であっても赤ちゃんの火葬が必要になります。

赤ちゃんは火葬するまで病院で預かっています。
退院のときに医師や看護師から死産届をもらうので、それをもって役所に行き火葬の依頼をします。

火葬する日にちが決まったら病院にお知らせください。

ちなみに、死産届けがないと、いかなる場合があっても火葬できません。
もちろん、自宅で処置するなどもってのほかですので、きちんとプロセスを辿ってください。

そして、火葬当日。
赤ちゃんの火葬は基本的に朝一番で行います。

赤ちゃんのように体格が小さい場合、高音の釜で火葬するとお骨ごと溶けてしまう可能性があるからです。
そのため、釜がまだ冷えて温度があまり高くない状態で火葬を行います。

火葬の手続きなどについては市町村によって異なるかと思うので役所に問い合わせてください。

 

流産や死産の際、気をつけることってあるの?

赤ちゃんが亡くなった後、分娩台に上がる前に自然と赤ちゃんが出ることがあります。
また、処置を行いトイレに行ったあと、トイレの中で赤ちゃんが出てしまうということがあります。

亡くなった赤ちゃんは、身体からすると異物です。
外へ出そうとする機能がはたらきます。

トイレに出た場合は流さないでください。
入院中であれば流さずにナースコールで看護師を呼びましょう。

家のトイレで出てしまった場合は流さず、出来るだけ赤ちゃんを見つけてください。
心配な場合は流さず、病院へ連絡してください。

下着やナプキンの上に出た場合、赤ちゃんを箱などに保管し病院に連絡してください。

トイレで流してしまった場合は仕方がありませんが、確信がある場合に赤ちゃんを一般ゴミに捨てたりしないでください。
倫理的な問題もありますが、ゴミから胎児が見つかった場合、警察が介入してしまう事態となります。
事件性を否定するためにも、必ず病院へ連絡してほしいと思います。

 

亡くなった赤ちゃんにしてあげられること、ありませんか?

たくさんあります、安心してくださいね。

火葬する場合、赤ちゃんを入れる棺桶を準備します。
箱ならなんでも大丈夫。
今は死産した赤ちゃんのために、かわいい箱が売っているところもあるようです。

赤ちゃんのまわりに、生まれたらあげたかったおもちゃなどをいれても大丈夫です。
金属じゃなければ平気です。
ぜひ、赤ちゃんのために入れてあげてください。

また、赤ちゃんの状態によりますが服なども着せることも出来ます。
希望がある人は、看護師に聞いてみてください。

出産後は母乳がでることがあります。
赤ちゃんに母乳を飲ませてあげたいという希望があれば行うことも可能です。
この場合も、看護師までお尋ねください。

生まれてから退院するまで、赤ちゃんと一緒に過ごすこともできます。
もちろん、お父さんと一緒も可能です。

もし、赤ちゃんと少しでも一緒に過ごしたいという思いがあれば、私たち看護師・助産師がその環境を作っていきます。

赤ちゃんの状態によりますが足形・手形も残せます。
これも看護師とともに行っていくので、希望があれば看護師に聞いてみてください。

それから、よく「赤ちゃんの写真も残したいけど、亡くなっているし写真撮ってもいいのかな」という言葉を聞きます。
火葬してしまったら形は残すことが出来ません。

写真を撮りたいという思いがあれば、ぜひ撮ってあげてください。

 

おわりに

亡くなった赤ちゃんを見ることは本当につらいことだと思います。
生まれてすぐ、状況を飲み込んでいるお母さんはいません。

赤ちゃんに会いたくても、会うのがつらくなってしまうお母さんもいます。
それだけ、情愛を抱いてしまうからです。

医療者から赤ちゃんに会うことを強要したりはしないので、そのあたりはは安心してください。
ただ、赤ちゃんと過ごせる時間はほんのわずかです。
赤ちゃんとの時間をどう過ごすかは、お母さんやお父さんなどご家族と話し合ってください。

死産は大変ナイーブな話のため、経験した話はほとんど聞かないと思います。
つらく悲しい体験であるため、自分から話すのもなかなか勇気がいることです。

もし、あなたやあなたの周りの人が死産に直面してしまったら、この記事の存在を思い出してもらえると嬉しいです。

ゆかたん

看護師
ゆかたん

この記事を書いた人

看護師7年目、総合内科、循環器、婦人科の経て、現在は救命救急センター(ECU)で勤務中。婦人科4年間の経験を生かし、CARE ME!では実際の現場をリアルにわかりやすく伝えていく。普段は夢の国ディズニーに入り浸り楽しく過ごしている。

ナースあさみ

看護師
ナースあさみ

この記事を監修した人

看護師10年目のアラサーナース。消化器外科内科6年、整形・内科混合病棟4年目。医療倫理や緩和ケアも好き。低用量ピル服用も10年目。特にトラブルなく過ごしています。